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刀剣ブログ

刀身彫刻・日本刀の彫物

日本刀彫物

日本刀の彫物

今回は、彫物の主な種類について紹介していきます。

短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長拾三年三月吉日 所持熊谷清六

短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長拾三年三月吉日 所持熊谷清六

刀身彫刻

彫物とは、刀身に施された彫刻のことをいいます。彫物は、樋に代表される刀の重量軽減や強度を高めるという目的だけでなく、美観も目的としていました。刀身に彫刻を施す技法は、直刀期に嚆矢が見られ、四天王寺に所蔵されている丙子椒林剣や七星剣、現在正倉院に所蔵されている呉竹杖刀に見られる金象嵌などが代表格として挙げられます。これが彎刀期に入ると次第に象嵌から彫刻へと変化していき、古い刀身彫刻の例としては古備前友成が樋の内に素剣の浮彫を施したものや、豊後行平が倶利迦羅竜や地蔵菩薩の浮彫を施した作などが挙げられます。刀身彫刻は、初期の頃から密教や修験道の影響を受けたと思われる題材が施され、現代に至るまで梵字や不動明王などの諸仏諸尊、倶利迦羅竜や密教の法具である護摩箸、蓮華、索、金剛杵など密教に関連した彫物が多くみられます。ただ、時代が下るにつれて信仰性が薄まり、特に新刀期以後は装飾性の方が強くなっています。

彫物見本

下記で代表的な彫物の一部を紹介させていただきます。

倶利伽羅(くりから)

倶利伽羅

刀身に施された彫物の代表格として倶利伽羅が挙げられます。倶利伽羅とは、倶利伽羅龍王の略で、龍が剣に巻きつき、これを呑み込もうとしている図になります。不動明王の変化神の一種とされており、剣が不動明王を、龍は力を表しています。剣巻龍ともいいます。

真行草(しんぎょうそう)

倶利伽羅の真行草三体

左:真の倶利伽羅、中:行の倶利伽羅、右:草の倶利伽羅

上記に挙げた倶利伽羅の彫物には、真行草の三種がみられます。書道の真書(楷書)・行書・草書などでもよく知られているように、事物すべてに真行草三体の表現があります。真は写実的表現、草は略体化された表現、行はその中ほどを指します。真の倶利伽羅は新刀以降に多く見られ、行と草の倶利伽羅は比較的古刀期に多く見られます。

不動明王(ふどうみょうおう)

不動明王

不動明王は密教特有の忿怒明王のうちの一つで、密教の主神である大日如来の化身とされています。軍神として、火の神として、魔を払う神として、と多くの側面をもつことから、武人だけでなく、火を扱う刀工や庶民にも信仰されました。彫物では、不動明王が剣と羂索を手にした岩上に立つ図、滝に打たれる図、火炎に包まれる図、二童子を従えた図など多くの構図がみられます。古くは名物「骨喰藤四郎」や「不動行光」「不動正宗」などが知られており、新刀期のものとしては埋忠明寿や虎徹の作品などにも有名なものがあります。

素剣(そけん)

素剣

不動明王の化身である剣の図です。簡素な彫物のため古くから見られ、また様々な種類が存在しています。

独鈷杵(どっこしょ)・三鈷柄剣(さんこづかけん)

独鈷・三鈷柄剣

左:独鈷杵、右:三鈷柄剣

元々は、インドの神々が使用する武器を模したもので金剛杵と総称されています。刃の数や形状などによって、独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵などと呼びわけられ、主に密教などで儀式に用いられます。三鈷杵の中央の刃を剣にしたものが三鈷柄剣です。

護摩箸(ごまばし)

護摩箸

同じ幅の二筋の直線で表された図で、腰二筋樋とも呼ばれます。護摩箸とは密教の法具の一つで、護摩を焚く際に用いられる鉄製の箸です。

梵字(ぼんじ)

梵字

梵字

梵字

梵字とは、インドの礼拝用言語の一つであるサンスクリット語(梵語)で用いられる文字です。梵字は、一字一字が諸仏諸尊を表していて、密教では仏尊を表す一音節の真言として種字或いは種子と呼んでいます。梵字の彫物で圧倒的に多いものは不動明王で、ついで摩利支天、愛染明王、大威徳明王、聖観世音菩薩、文殊菩薩などがみられます。

爪(つめ)・鍬形(くわがた)

爪・鍬形

左:鍬形、右:爪

三鈷杵または三鈷柄剣の爪を意匠化した湾曲した簡潔な筋状の図柄で、素剣や護摩箸の下部に彫るのが通常です。特に長く延びたものを鍬形と呼んでいます。

蓮華(れんげ)・蓮台(れんだい)

蓮華・蓮台

素剣や護摩箸などの密教法具に添えて彫られることが多く、刀身の上部の方に施されたものを蓮華、下半に施されたものを蓮台と呼びます。

龍(りゅう)

這龍

東洋での龍は聖獣の一つであり、中国では皇帝の象徴とされたほどです。日本では、主に水神として崇敬され、河川や湖、池、沼などの水辺には、現在でも龍を祀った祠や神社が多く見られます。

珠追龍(たまおいりゅう)・上龍(のぼりりゅう)・下龍(くだりりゅう)

昇龍

宝珠を追う龍の図を珠追龍と呼びます。上龍・下龍と共に主に新刀期以降に見られる彫ですが、名物上龍下龍正宗があるように古刀期になかったわけではありません。

毘沙門天(びしゃもんてん)

毘沙門天

毘沙門天(多聞天)は、インドでは元々富と財宝の神(日本でも七福神の一人としてその名残をとどめてはいます)でしたが、中央アジアから中国へ伝来する過程で軍神となり、日本では多くの武将や武士たちに信仰されました。特に上杉謙信が篤く信仰したことでも知られています。

彫身刀剣・一竿子忠綱(いっかんしただつな)

大坂新刀の二代粟田口忠綱(号 一竿子)は、埋忠明壽や堀川国広などと並び新刀屈指の刀身彫刻の名手と称えられています。明壽や国広などの彫り物は短刀や小脇指といった短いもの(もっとも明壽の場合、正真確実な刀が一振のみしか現存していません)に多く見られますが、一竿子忠綱の場合は刀や長めの脇差にも彫物を手掛けています。また、太平の世を象徴するように真の倶利伽羅や梅倶利伽羅など手の込んだ彫り物が多く見られるのも特徴です。

一竿子忠綱

脇差 銘 一竿子忠綱彫同作 元禄十二年八月日
彫物(表)珠追い龍、(裏)三鈷柄剣

一竿子忠綱

短刀 銘 粟田口一竿子忠綱 宝永七年二月日彫同作
彫物:(表)真の倶利伽羅、(裏)護摩箸に爪

一竿子忠綱

脇差 銘 一竿子忠綱彫同作 元禄十一年二月日
彫物:(表)真の倶利伽羅、(裏)梅に竹

一竿子忠綱

刀 銘 一竿子忠綱彫同作 元禄十二年八月日
彫物:(表)真の梅倶利伽羅、(裏)登龍門

刀身彫の技法

薬研彫(やげんぼり)

文字彫に多く見られる技法で、彫った部分の窪みが薬研の形のようにVの字になることから薬研彫と呼ばれています。古くから見られる技法の為、中世から現代まで多くの作品がみられます。

浮彫(うきぼり)

刀身や鐔などの刀装小道具に画題や文様が浮き上がるように彫る技法で、肉取りの量や鋤き取る技法の違いによって高肉彫や薄肉彫、肉合彫、鋤出彫、鋤下彫などと呼び分けられています。

透彫(すかしぼり)

基本的には、主題となる図柄を肉彫で表現し、その周囲を彫り透かす技法です。強度が下がる為、作例のほとんどは短刀や脇差です。

櫃内彫(ひつないぼり)

刀身表面に鋤き施された長方形または卒塔婆形の櫃の内部に、図柄を肉彫或いは浮彫で表現する技法です。名物骨喰藤四郎が代表例として挙げられます。

樋内彫(ひないぼり)

刀身に掻き施された樋の内部に図柄を肉彫で表現、或いは浮彫で表現する技法です。

刀剣彫刻の書籍

数多い日本刀に関する書籍の中でも刀剣の彫物だけにマトを絞ったものは皆無ですのでお勧めの書籍です。

日本刀の彫物・佐藤良樹、中宮好郎(1970年)

画像:脇指 大和州住人九郎三郎重国居駿河州後於紀伊州明光山作之/羽掃 為都筑久太夫氏勝作之/元和八年戊八月吉日(棟)鏨物 天下一 池田権助義照

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